修習職の職権が与えられてどんな業務ができるようになったかについて書いてみます。
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家事事件では、離婚の決定を下せます。
スウェーデンでは二人とも離婚したくても、裁判所に申請して判決文を待たないといけないんです。日本だと合意してたら離婚届で済みますよね。子供の親権や面会権・養育費で揉めていると調停・裁判になるので私たちの職権では決定は出せません。
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刑事事件では、修習職の職権で罰金までの判決を下すことができます。(ただし法律で「罰金または服役半年以内」で、状況から罰金以外の刑になる可能性がない案件のみ。)
多いのは道路交通法違反、軽微な薬物法違反・窃盗(いわゆる万引き)・銃刀法違反など。
公判で審査する場合は、裁判長を務めます。これははじめとても緊張しました!
人前でしゃべらないといけないし、何か予想外の事態が起こったときにどう対応するか、どぎまぎ。
しかも、裁判を仕切りながら同時にどんな判決にするかも考えます。スウェーデンは参審制(一般市民から選出された参審員と職業裁判官がともに評議を行うシステム)を採用しているので、その後の議論まで気を抜けません。
ほとんどの参審員は職業裁判官(私たち)の意見に同意してくれスムーズに決まりますが、時々反対され、その場合多数決になります。2対2になった場合は被告人に有利な判決が採用されるので、裁判官が有罪に投票しても2人の参審員が無罪に投票すると、無罪になります。なので参審員に論点を正しく理解してもらえるように説明するのはとっても重要!
でも、notarieは若くて経験が浅いからナメられることがあったり、クセが強い参審員もいたりで中々大変です。意見が分かれたときは、採用されなかった方の見解を『少数意見』として判決文の後ろにつけます。
私も一度参審員に反対されて不本意に無罪判決を言い渡したことがあります。そのあと検事官が控訴したときはほっとしました。高等裁判所の審理許可が下りたので、おそらく有罪に覆るだろうと思います。
裁判長をする回数を重ねて、最近はあまり緊張しなくなりました。予想外の事態が起こった時も落ち着いて対応できるようになってきました。困ったらいったん休憩にして調べればいいし、隣には同僚が書記で座っているのでその点も安心。
修習職が裁判長を務めるときに、同じ修習職が交代で書記をするので、判決文を書き終わったらお互いに校正のため見せ合います。スウェーデン語のミスがあればその時に同僚が見てくれるので安心。
公判をしなくて済む案件は書面で審査します。その際は自分ひとりで判決を下します。
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民事事件は、修習職の職権では少額訴訟や欠席裁判、または和解した案件で判決を下すことができます。判決を下す以外にも、審議の準備の手続きをどう進めるのかの決定を下したり、調停をしたり。
多いのは駐車管理会社が駐車違反料金の支払いを求める案件。契約のトラブルや損害賠償請求もあるし、最近は消費者がコロナで中止になったマラソン大会の返金を求めるタイムリーな案件もありました。
簡易事件では調停で議長を務めるのが中々面白い!うまく進められて当事者の和解まで持っていけると嬉しいです

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混合部署では、だいたい上記のような感じ。破産部門など特別部署だと、他の案件でも決定を出したりします。
職権を得てからも、見習い期間の業務(裁判での書記・判事が出す判決・決定文の下書きなど)も続きます。意外と時間を取られるのが一般からの質問への回答。ほとんどが電話質問で、やっている作業を中断しなきゃいけないし、知らないことを聞かれて調べなきゃいけなかったり、業務範囲外のことを聞いてきて引き下がらない人への対応などがちょっと厄介。
私たちの業務範囲は裁判所での手続きの案内。それでも具体的な相談をしてきて引き下がらない人には、「裁判所は中立の立場なので、私にはあなたが有利になるアドバイスをすることはできないんです。弁護士さんに相談した方がいいですよ、それならあなただけの側に立ってアドバイスしてもらますから~」というと大体引き下がってくれることを、最近の経験で学びました。
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司法修習期間は学びの期間なので、本来ならば、他の職場訪問やゲストを招いての講習会など、業務以外での学びの場があるはずでした。あとは同僚との交流やパーティーも。でもコロナパンデミックのせいでほぼすべて中止…

とっても残念。スカイプで代用する試みもボチボチあるので、実際に訪問したり会うのには到底敵わないけれど!)どこまでそれで補えるかに期待!