前学期は、私が前々から興味のあった社会保障制度についても勉強しました。今回その中でも、日本からの関心が高いと思われる育児休業制度についてご紹介します。
育児のため休みを取る権利、そしてその間の金銭的な補助については別々の法律があるのですが、今回はわかりやすいように、お金が支給されて休みが取れる期間を、育児休業と呼んで説明することにします。
育児休業の期間
育児休暇は、子供一人につき合計480日(注1)で、子供が8歳(注1)になるまでの期間、分けて取ることができます。
両親に監護権がある場合、両親とも平等に育休を取る権利があり、両親の合計が480日と決まっています。
注1:一人の場合。双子(またはそれ以上)だと追加の日数があります。
注2:子供が8歳でまだ初等教育の1年目を終えていない場合、それを修了するまで。
育休の権利は譲り合うことができ、どちらかが多くとることも可能ですが、90日間*は相手に譲ることのできない期間と決まっています。*2016年1月以降に生まれた子供の場合。
つまり、片方の親が480日の育休を全部取ることはできないのです。例えば、もし父親が90日*の期間取らなければ、その分権利が消滅してしまうので取らないと損、という仕組みです。監護権を持った親が1人の場合は、1人で全部取ることができます。
上記の90日ルールは2016年1月に改正されたばかりで、それより以前は60日でした。
育児休業中の給付金
給付金の額(レベル)は3つあり、その人が就業状態・収入の条件を見てどのグループに属しているかでどのレベルになるかが決まります。これを詳しく説明するとかなりややこしくなるので、簡略化して説明します。
一番多くもらえるグループの人たち、自分の給料の80%弱(上限あり)がもらえます。このグループに入るには、期間や収入の条件を満たす必要があります。
上記に満たない人(働いたことはあるけれど、収入が低かったり無かったりする人)は、1日250kr。
労働による社会保障制度にカバーされていない居住者(たとえば一度も働いたことのない学生や、昔働いたことがあってもニート期間が長い人)は、1日180kr。
(数字は2016年1月現在。)
グループ分けの説明をかなり簡潔にしてしまったので、詳しく知りたい方は下のリンクを参照ください。つまるところ、男女ともバリバリ働いている方が、育児休業中ももらえる額が多くなるということです。
平等な社会への取り組み
政府の目標は両親とも平等に取得させることで、そのために色々な取り組みがされています。
そのうちの一つが、上記の、譲り合えない育休期間の60日から90日への引き延ばしです。引き延ばされた理由は、男女間の平等性を上げるため!
というのも、平等に育休を取得できる制度はあっても、実際には譲れない60日のみを男性が取り、残りを母親が取るというケースが多くみられたためです。この譲れない期間を90日に伸ばすことで、男性の育休取得を促進するのが狙いです。
この部分、誤解が多いのですが、決して男性の育休可能期間が伸びたというわけではありません!もともと男女とも育児休暇には平等に権利があるのですから。新聞記事の見出しにも誤解を招く表現が多いです。
2009年に生まれた4歳児の両親が取得した日数。30日取った父・母親は何%か、60日取った親は何%か(以下略)、というグラフです。父親の49%が60日は取っていますが、それ以上取るのは少数派なのが分かります。
この他にも、Jämställdhetsbonus(平等ボーナス)という制度があり、両親が平等に取得した場合給付金がもらえるようになっています。
政府が英語で発表した記事を見つけたので、リンクを貼っておきます。2015年6月の記事なので、改正前です。
一時的育児休業
父親には上記の育児休業に加え子供誕生後、子供1人につき10日間の追加育児休業の権利があります。
これは子供の誕生後、家に帰ってきた16日目までの期間限定で、生まれた子供のお世話を母親と一緒にすること、兄弟がいる場合兄弟の面倒を見ることを想定しての制度です。父親に該当する人がいない場合、条件を満たすほかの人が取ることも可能です。(これは同性婚の生まない方のパートナーなどを想定しているのかなと思います。)
もしも養子を迎えた場合は、両親合わせて子供1人につき10日間の育児休業を取ることができます。
妊娠中
女性は、妊娠を理由に仕事ができない場合休業し、手当てをもらうこともできます。今回は割愛。
育児休業制度は色々調べているとまるでジャングルのようで、中々把握するのも説明するのも難しいなと思いました。
今回あまりマニアックにならないように簡潔にした部分があります。ちゃんと説明するには社会保障制度全般についてもっと詳しく説明する必要性を感じました。読んででくれる人がいそうだったら、いつか記事にしてみようかな。